家族が「争わない」ために!遺言書の作成方法と「これだけは知っておくべき」注意点
「遺言書なんて、まだ早いかな?」
「うちは家族仲が良いから、必要ないかも…」
そう思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、残念ながら、どんなに仲の良いご家族でも、いざ相続となると、思いがけないトラブルに発展してしまうケースは少なくありません。
あなたの「残したい想い」をきちんと伝え、大切なご家族が将来、困ったり争ったりしないように。そのためには、「遺言書」の作成が、非常に有効な手段なんです。
今回は、遺言書を「どのように作れば良いのか」という具体的な作成方法から、「これだけは押さえておきたい」注意点まで、わかりやすく解説していきます!
そもそも「遺言書」ってなぜ必要?その役割とは
遺言書は、あなたが亡くなった後、財産を誰に、どれだけ、どのように分けたいか、といった最終的な意思を法的な効力を持つ形で残すための書類です。
その主な役割は以下の通りです。
- 家族間の争いを防ぐ: 最も重要な役割です。遺言書がない場合、法律で定められた相続分(法定相続分)に基づいて遺産分割協議が行われますが、これだと意見がまとまらず、家族間のトラブルに発展するケースが多々あります。遺言書があれば、あなたの明確な意思が示されるため、争いを未然に防ぐことができます。
- 特定の財産を特定の相手に渡せる: 法定相続人以外の人(例えば、お世話になった友人や団体など)に財産を贈りたい場合や、特定の財産(例えば、家や土地)を特定の相続人に渡したい場合に、遺言書は不可欠です。
- 相続手続きをスムーズに: 遺言書があれば、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)の手間が省け、相続手続きを迅速に進めることができます。
「備えあれば憂いなし」という言葉の通り、遺言書は、ご家族への「最後のラブレター」であり、残された家族への「思いやり」の形なのです。
遺言書の種類とそれぞれの「作成方法」
遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。それぞれの作成方法と特徴を見ていきましょう。
1. 手軽さが魅力!「自筆証書遺言」
自分で紙とペンがあれば作成できる、最も手軽な遺言書です。
- 作成方法:
- 全文を自筆で書く: パソコンなどで作成したものは無効です。必ずご自身の筆跡で書きましょう。
- 日付を記載する: 「〇年〇月〇日」と具体的に記載します。「吉日」などはNGです。
- 氏名を自筆で書く: ご自身の名前を自筆で書きます。
- 押印する: 認印でも実印でも構いませんが、実印が推奨されます。
- メリット:
- 費用がかからない。
- いつでも、どこでも、一人で作成・修正できる。
- 注意点:
- 無効になるリスクが高い: 形式に不備があると、せっかく書いても無効になってしまう可能性があります。特に、日付の不備や押印漏れが多いです。
- 紛失・偽造のリスク: 保管場所によっては、紛失したり、悪意のある人に改ざんされたりする危険性があります。
- 検認手続きが必要: 遺言書を発見した人は、家庭裁判所で「検認」という手続きをしなければなりません。これには手間と時間がかかります。
- 「自筆証書遺言書保管制度」の活用: 無効リスクや紛失・偽造のリスクを減らすため、法務局で保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」を利用するのがおすすめです。これなら検認も不要になります。
2. 最も確実な「公正証書遺言」
公証役場で、公証人が作成してくれる遺言書です。最も安全で確実な方法として推奨されます。
- 作成方法:
- 公証人と事前打ち合わせ: 公証役場へ連絡し、希望内容を伝え、必要な書類などを確認します。
- 証人2名を用意: 遺言書作成の際、証人2名の立ち合いが必要です。公証役場で紹介してもらうこともできます(費用はかかります)。
- 公証役場で作成: 公証人があなたの希望を聞き取り、法的に有効な遺言書を作成してくれます。
- 署名・押印: 作成された遺言書の内容を確認し、あなたと証人、公証人が署名・押印します。
- メリット:
- 法的に有効である可能性が高い: 公証人が作成するため、形式不備で無効になる心配がほとんどありません。
- 紛失・偽造の心配がない: 公証役場で原本が保管されるため、紛失や偽造のリスクがありません。
- 検認が不要: 家庭裁判所での検認手続きが不要なため、相続手続きがスムーズです。
- 注意点:
- 費用がかかる(財産の額に応じて変動)。
- 証人2名の立ち合いが必要。
- 作成に手間と時間がかかる。
遺言書作成で「これだけは押さえておきたい」注意点!
せっかく遺言書を作成しても、内容に不備があったり、思いがけない落とし穴があったりすると、かえってトラブルの原因になりかねません。
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「遺留分」に配慮する
- 一部の相続人(兄弟姉妹を除く配偶者、子、直系尊属)には、法律で定められた最低限の相続割合「遺留分」があります。
- 遺留分を侵害する内容の遺言書でも法的には有効ですが、侵害された相続人から「遺留分侵害額請求」をされる可能性があります。これにより、かえってトラブルになることもあるので、遺留分には十分に配慮した内容にしましょう。
- 専門家(弁護士や司法書士)に相談して、遺留分を考慮したアドバイスを受けるのが賢明です。
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誰に何を渡すか「具体的に」明確に書く
- 「長男に家をあげる」だけでなく、「東京都〇〇区〇丁目〇番地の土地および建物(家屋番号〇〇)を長男〇〇に相続させる」のように、財産を特定し、誰に渡すかを具体的に記載しましょう。
- あいまいな表現は、解釈の違いを生み、トラブルの元になります。
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付言事項(メッセージ)を活用する
- 遺言書は法的な内容だけでなく、ご家族への「感謝の気持ち」や「メッセージ」を添える「付言事項」を書くことができます。
- これにより、遺言書の内容への理解が深まり、家族間の感情的なしこりを和らげる効果が期待できます。「なぜそのように財産を分けるのか」という理由も書くと良いでしょう。
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専門家(弁護士・司法書士)に相談する
- 特に財産が複雑な場合や、特定の相続人に多く渡したい場合、遺留分の問題がある場合などは、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
- 専門家は、法的に有効な遺言書の作成をサポートしてくれるだけでなく、将来起こりうるトラブルを予測し、適切なアドバイスをしてくれます。
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定期的に見直す
- 家族構成の変化(結婚、出産、離婚、死去など)や、財産の状況の変化、ご自身の気持ちの変化などによって、遺言書の内容を見直す必要が出てくることがあります。
- 一度作ったら終わりではなく、数年ごとに内容を見直す習慣をつけましょう。
まとめ:遺言書は「未来への思いやり」
遺言書は、決して「縁起が悪いもの」ではありません。むしろ、残された大切なご家族が、あなたの死後、争うことなく穏やかに暮らしていくための、「最高の贈り物」であり「未来への思いやり」です。
「いつか…」ではなく、ご自身の意思がはっきりしている「今」だからこそ、遺言書の作成を真剣に考えてみませんか?適切な方法で、あなたの「最後の想い」を形にし、大切なご家族に安心を届けましょう。