再婚前に知っておきたい「遺族年金」の損得勘定|受給権消滅後の生活費をどう補う?


新しいパートナーとの再婚は、人生における大きな喜びであり、新しいスタートです。しかし、現実的な問題として向き合わなければならないのが「お金」のこと。特にこれまで家計の柱となっていた「遺族年金」が再婚によって消滅することは、家計にとって小さくないインパクトを与えます。

「再婚して幸せになりたいけれど、生活水準が下がるのは不安」「損をしないためにはどう考えればいい?」と悩むのは、決して欲張りなことではありません。

この記事では、遺族年金がなくなることによる経済的な影響を「損得勘定」として冷静に分析し、受給権消滅後の不足分をどう補っていくべきか、具体的な対策を解説します。


遺族年金の「総額」をシミュレーションしてみる

まず最初に行いたいのが、再婚せずに遺族年金をもらい続けた場合、将来的に合計でいくら受け取れるはずだったのかを把握することです。

  • 遺族基礎年金: 下のお子さんが18歳(高校卒業)になるまで支給。

  • 遺族厚生年金: 原則として一生涯(自身の老齢年金受給開始まで、あるいは併給)支給。

  • 中高齢寡婦加算: 40歳から65歳になるまで遺族厚生年金に加算される(※要件あり)。

例えば、月額10万円の遺族年金を受け取っている場合、年間で120万円。10年で1,200万円、20年なら2,400万円という大きな金額になります。再婚するということは、この「確定している将来の収入」を手放すという選択でもあります。


「損」を「得」に変えるための3つの視点

遺族年金がなくなることを単純な「損」と捉えるのではなく、再婚による経済的なメリットと天秤にかけてみましょう。

1. 二馬力(共働き)による世帯年収の増加

一人で家計を支え、遺族年金で補う生活よりも、パートナーと協力して共働きをする方が、世帯全体のキャッシュフローは安定することが多いです。また、住居費や光熱費などの固定費が「一人分+アルファ」で済むため、生活コストの効率が上がります。

2. 将来の「老齢年金」の強化

新しいパートナーが会社員や公務員であれば、あなたがその扶養に入る、あるいは自身も厚生年金に加入して働くことで、将来受け取れる「老齢年金」の金額を増やすことができます。目先の遺族年金はなくなりますが、自分の老後の安心を積み立てる期間と捉え直すことが可能です。

3. 社会保険料や税金の負担軽減

パートナーの扶養に入ることで、これまで自分で支払っていた国民年金保険料や健康保険料の負担がなくなる場合があります(※収入制限あり)。月々の支出が数万円単位で減るケースもあるため、これも重要な「得」の要素です。


受給権消滅後の生活費を補う具体的な対策

遺族年金という「不労所得」がなくなった穴を埋めるためには、戦略的な家計管理が必要です。

NISAやiDeCoを活用した資産形成

もし再婚によって世帯収入が増えるのであれば、その増えた分をそのまま生活費に回すのではなく、**NISA(少額投資非課税制度)iDeCo(個人型確定拠出年金)**を活用して積み立てに回しましょう。

遺族年金は「今」を支えるお金でしたが、投資による資産形成は「将来」の自分を支えるお金になります。早い段階で少額からでも始めることで、複利の効果を活かして効率よく不足分を補えます。

働き方の見直しとキャリアアップ

「遺族年金をもらっているから、年収を一定以下に抑えなければならない」という制限(年収850万円未満など)から解放されるのも、再婚の隠れたメリットです。制限を気にせずフルタイムで働いたり、資格取得をして給与アップを目指したりすることで、年金以上の収入を得る道が開けます。

パートナーとの「家計の見える化」

再婚後に最もトラブルになりやすいのがお金の問題です。

  • 遺族年金がなくなることをパートナーは正しく理解しているか?

  • 万が一、再婚生活がうまくいかなかった場合の備えはあるか?

  • お子さんの教育資金はどちらが、どう負担するか?

これらを曖昧にせず、契約に近い感覚で事前にルールを決めておくことが、精神的な安定と経済的なリスクヘッジにつながります。


覚えておきたい「中高齢寡婦加算」と「振替加算」

少し専門的になりますが、以下の制度も損得勘定に関係します。

  • 中高齢寡婦加算の喪失: 40歳以上で夫を亡くした妻に加算される手当ですが、再婚すれば当然なくなります。

  • 振替加算への影響: 自分の老齢年金に加算される可能性がある「振替加算」も、再婚後の自身の年金加入状況によって変わる場合があります。

これらの細かな計算は複雑なため、再婚前に一度、年金事務所で「再婚した場合、私の将来の年金額はどう変化しますか?」とシミュレーションを依頼してみるのが最も確実です。


まとめ:経済的な自立と新しい幸せの両立

遺族年金の消滅を「損」とだけ捉えてしまうと、新しい生活に踏み出す足がすくんでしまうかもしれません。しかし、再婚は新しい経済的基盤を築くチャンスでもあります。

大切なのは、「いくらなくなるか」を正確に把握し、「どうやってそれ以上を作るか」を前向きに考えることです。公的な保障に頼る生活から、パートナーとの協力や自分自身の資産形成によって守る生活へ。

しっかりとした損得勘定と対策があれば、お金の不安を解消して、心からの笑顔で新しい一歩を踏み出せるはずです。


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