籍を入れなければ遺族年金はもらえる?「事実婚」とみなされる基準と受給停止のリスク
大切な方を亡くされた後、新しいパートナーとの出会いがあったとき、ふと頭をよぎるのが「遺族年金」のことではないでしょうか。
「入籍さえしなければ、遺族年金はもらい続けられる」という噂を耳にすることもあるかもしれません。しかし、日本の年金制度において、その認識には大きなリスクが隠されています。
新しい人生の選択をする前に知っておきたい、「事実婚(内縁関係)」と遺族年金の切っても切れない関係について、分かりやすく解説します。
籍を入れなくても「再婚」とみなされる理由
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)を受給する権利は、受給者が「婚姻」したときに消滅します。そして、この「婚姻」には、戸籍上の手続きを行う法律婚だけでなく、**「事実上の婚姻関係(事実婚・内縁関係)」**も含まれます。
年金制度は「生計を維持していた人を亡くしたことによる経済的損失」を補填する仕組みです。そのため、入籍の有無に関わらず、新しいパートナーと経済的・精神的に支え合う関係(夫婦同然の生活)が始まった時点で、遺族年金の役割は終わったと判断されるのです。
日本年金機構が「事実婚」と判断する具体的な基準
では、どのような状態になると「事実婚」とみなされるのでしょうか。主な判断基準は以下の3点です。
1. 婚姻の意思がある
「将来的に籍を入れる約束をしている」「お互いの親族に配偶者として紹介している」「結婚式を挙げた」など、本人たちの間に夫婦として生活しようとする合意がある場合です。
2. 同居し、共同生活を営んでいる
最も明確な基準の一つが「住民票」です。
同じ住所に住民票がある
世帯主がどちらか一方で、もう一方が「未届の妻(夫)」として登録されている
しかし、「住民票を別々にしていればバレない」というのは誤解です。住民票が別であっても、頻繁に行き来があり、実態として寝食を共にしている場合は、近隣の状況や公共料金の支払い状況などから総合的に判断されることがあります。
3. 経済的な依存関係がある
家計が一つになっているかどうかも重要なポイントです。
生活費を共通の口座で管理している
一方がもう一方の健康保険の扶養に入っている
一方が所有するマンションなどに無償で同居している
これらは「生計を同じくしている」証拠となり、事実婚認定の強力な根拠となります。
知らないと怖い「受給停止」と「返還」のリスク
もし事実婚の状態にありながら届け出を出さずに遺族年金を受取り続けた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
過払い金の全額返還請求
事実婚が判明した時点から過去に遡り、受給権がなくなった後に支払われた年金を「全額返還」しなければなりません。
年金の返還請求には「5年」という時効がありますが、数年分をまとめて返還するとなると、数百万円単位の多額の負債を抱えることになり、新しい生活を圧迫しかねません。
延滞金が発生する場合も
故意に隠していたと判断されるなど、悪質なケースとみなされると、返還額に対して利息(延滞金)が加算されることもあります。
通報や調査で発覚するケース
「なぜ役所は事実婚を知るの?」と疑問に思う方もいるでしょう。発覚のきっかけは様々です。
住民票の異動や世帯合併の手続き
所得税の扶養控除の申請
第三者からの情報提供(近隣住民など)
定期的に行われる「受給権者現況届」の調査
近年はマイナンバー制度の普及により、行政間での情報連携がスムーズになっているため、隠し通すことは非常に難しくなっています。
新しい一歩を後悔しないためにできること
遺族年金がなくなることは、生活設計において大きな転換点です。「お金のために新しい幸せを諦める」のも、「リスクを承知で受給を続ける」のも、どちらも心苦しい選択ですよね。
後悔しないためには、以下のステップを踏むことをおすすめします。
パートナーとオープンに話し合う
遺族年金がなくなることで、具体的に月々いくらの収入が減るのかを共有しましょう。その上で、パートナーの収入や自身の就労によって、どのような生活が送れるのかをシミュレーションすることが大切です。
年金事務所へ相談する
「自分の今の状況が事実婚に当たるのか」と不安な場合は、匿名でも良いので年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。
「失権届」を正しく提出する
新しい生活を後ろめたさなく楽しむためには、ルールに則った手続きが必要です。再婚(事実婚含む)をした場合は、速やかに「年金受給権者失権届」を提出しましょう。
まとめ
「籍を入れなければ大丈夫」という安易な考えは、将来的に大きなトラブルを招く恐れがあります。遺族年金は、これまでの生活を支えてくれた感謝すべき制度ですが、新しい家族という支えができたとき、その役割は次のステージへと引き継がれます。
正しく制度を理解し、誠実な手続きを行うことが、新しいパートナーやお子さんとの幸せな未来を守ることにつながります。
もしあなたが「これからどうすればいいの?」と迷っているのであれば、まずは現状の家計を整理し、将来のライフプランをパートナーと一緒に描き直すことから始めてみてください。
こちらのビデオでは、再婚時に遺族年金をどうすべきか、専門的な視点からさらに詳しく解説されています。
遺族年金を受給中に再婚したらどうなる?受給権がなくなるケースと知っておきたい注意点