養子縁組なしでも財産を残せる?「遺言書」と「生命保険」で作る新しい相続の備え
「再婚相手の連れ子を可愛がっているけれど、養子縁組はしていない。自分が亡くなったとき、この子に財産を譲ることはできるのだろうか?」
ステップファミリー(再婚家庭)において、このような悩みを持つ方は少なくありません。子供の名字を変えたくない、実親との関係を尊重したいといった理由で、あえて養子縁組をしない選択をする割合は年々増えています。
しかし、日本の法律では**「養子縁組をしていない連れ子」には相続権が一切ありません。** 何の対策もせずに万が一のことがあれば、長年共に暮らした子供に1円も財産が渡らないという悲しい事態を招いてしまいます。
この記事では、養子縁組をしないまま子供にしっかりと財産を残すための、具体的で確実な2つの対策「遺言書」と「生命保険」について詳しく解説します。
なぜ養子縁組をしないと相続できないのか?
まず、日本の相続制度の基本を確認しておきましょう。
法律上の相続人(法定相続人)になれるのは、配偶者と血のつながりがある血族(または養子縁組をした子)のみです。再婚相手の連れ子は、どれだけ実の親子のように仲良く暮らしていても、法的には「他親等」の親族にすぎません。
そのため、再婚相手が亡くなった際、遺産は「配偶者」と「再婚相手の親や兄弟、あるいは前妻との間の実子」に流れてしまい、連れ子には一切の権利が発生しないのです。
このリスクを回避するために、以下の2つの手法を組み合わせることが重要になります。
対策1:遺言書による「遺贈」で確実に渡す
養子縁組をしていない子供に財産を贈る最も一般的で強力な方法が、遺言書による**「遺贈(いぞう)」**です。
遺言書に書くべきこと
遺言書の中に「私の財産の全部(または一部)を、妻の連れ子である〇〇に遺贈する」と明記します。これにより、法定相続人ではない子供にも、預貯金や不動産を譲ることが可能になります。
「公正証書遺言」がおすすめな理由
自分ひとりで書く「自筆証書遺言」は、書き方のミスで無効になったり、死後に発見されなかったりするリスクがあります。公証役場で作成する「公正証書遺言」なら、法的に確実な内容で作成でき、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
注意点:「遺留分」への配慮
もしあなたに実子や親がいる場合、彼らには最低限受け取れる財産の枠(遺留分)があります。連れ子にすべてを譲ると、後から他の親族とトラブルになる可能性があるため、遺言書を作成する際は専門家に相談し、バランスを考慮した内容にすることが大切です。
対策2:生命保険を活用した「現金」の確保
遺言書と並んで非常に有効なのが、生命保険の活用です。
受取人を「連れ子」に指定できる
以前は、生命保険の受取人は「配偶者または2親等以内の血族」に限られることが一般的でした。しかし現在は、ステップファミリーの増加に伴い、養子縁組をしていない連れ子を受取人に指定できる保険会社が増えています。
(※同居実態や家計の同一性を証明する書類が必要になる場合があります)
生命保険を活用するメリット
即時性: 相続の手続き(遺産分割協議)は時間がかかることが多いですが、保険金は受取人が請求すれば比較的早く現金で支払われます。
遺産分割の対象外: 生命保険金は「受取人固有の財産」とみなされるため、他の相続人から文句を言われる筋合いがなく、確実に子供の手に渡ります。
相続税の非課税枠: 養子縁組をしている場合は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えますが、養子縁組なしの遺贈の場合はこの枠が使えない点には注意が必要です。
養子縁組「なし」の相続で知っておくべき税金の話
法律的な親子関係がない相手に財産を譲る場合、通常の相続とは異なる税制上のルールがあります。
相続税の2割加算: 配偶者や実子、親以外の人が財産を受け取る場合、相続税額が2割増しになります。連れ子に遺贈する場合も、この2割加算の対象となります。
不動産取得税・登録免許税: 養子であれば安く済む不動産の名義変更費用も、遺贈の場合は少し割高になることがあります。
これらのコストを差し引いても、子供が将来困らないための「お守り」として対策をしておく価値は十分にあります。
まとめ:絆を形にするための「大人の責任」
「養子縁組をしない」という選択は、子供の心を守り、実親との絆を尊重するための優しい決断です。しかし、その優しさが将来、子供を経済的な困窮や親族トラブルに巻き込んでしまっては本末転倒です。
遺言書で、あなたの「譲りたい」という意思を法的な力に変える。
生命保険で、子供がすぐに使える「現金」を準備する。
この2つを整えておくことで、養子縁組という形式にとらわれなくても、子供を生涯守り続けることができます。
新しい家族としての幸せを形にするために、元気なうちから少しずつ準備を始めてみませんか?