連れ子が「名字を変えたくない」と言ったら?無理に養子縁組をしない家族の形


「再婚は嬉しいけれど、子供が名字を変えるのを嫌がっている……」

「多感な時期だし、無理に養子縁組を強要して関係を壊したくない」

再婚を控えた親御さんにとって、子供の気持ちと新しい生活の折り合いをどうつけるかは、最もデリケートで悩ましい問題です。特に小学校高学年から中高生にかけての時期は、自分のアイデンティティ(自己同一性)が確立される時期。名字が変わることに強い抵抗を感じる子は少なくありません。

実は、「再婚=必ず養子縁組をして名字を合わせる」という時代は終わりました。 現在は、子供の意思を尊重してあえて養子縁組をしない、あるいは「入籍だけして養子縁組は保留にする」という選択をするステップファミリーが増えています。この記事では、子供の「名字を変えたくない」という気持ちに寄り添いながら、家族の絆を深めていくための具体的な対策と、法律面での注意点を解説します。


なぜ子供は「名字」にこだわるのか?

大人が思う以上に、子供にとって名字は自分自身を象徴する大切なものです。

  • 学校での説明が面倒: 「なんで名前変わったの?」と聞かれることへの苦痛。

  • 実親への思い: 名字を変えることが、離れて暮らす実の親を裏切るような罪悪感。

  • これまでの自分: スポーツや習い事、友達付き合いで親しまれてきた名前への愛着。

「家族なんだから同じ名字にするのが当たり前」という価値観を押し付けてしまうと、子供は新しい親(継親)に対して心を閉ざしてしまうリスクがあります。


養子縁組をしないという選択:その割合とメリット

実際に、再婚家庭において養子縁組をしない選択をするケースは全体の2割〜3割程度にのぼると推測されます。無理に手続きをしないことで得られるメリットは意外と多いのです。

1. 子供のストレスを最小限に抑えられる

今の名前のまま生活できることは、子供にとって最大の安心材料です。転校のタイミングなどでない限り、周囲に再婚を知られずに済むため、平穏な学校生活を維持できます。

2. 「ゆっくり家族になる」時間を持てる

「今日からこの人がお父さん(お母さん)だよ」と言われても、すぐに受け入れられる子ばかりではありません。まずは「親のパートナー」という心地よい距離感からスタートし、信頼関係が築けてから養子縁組を検討する方が、結果として家族の絆が強固になることが多いのです。

3. 実親からの養育費を維持しやすい

法律的な側面では、養子縁組をしないことで、元配偶者(実親)の扶養義務が第一順位のまま維持されます。これにより、経済的なサポート(養育費)を減額されることなく受け取り続けられる可能性が高まり、子供の進学費用の確保などにおいて有利に働きます。


養子縁組をしない場合の「手続き」と「暮らし」

「名字を一緒にしないと、一緒に住む上で不便があるのでは?」という疑問にお答えします。

戸籍はどうなる?

再婚相手とあなたが籍を入れても、子供と養子縁組をしなければ、子供の戸籍は元のまま(あなたの以前の戸籍、または新しく作ったあなたの戸籍)に残ります。

  • 夫(再婚相手): 筆頭者

  • 妻(あなた): 配偶者

  • 子: 妻の戸籍に入ったまま(名字は元のまま)

日常生活での不便は?

実は、名字が違っても日常生活で困るシーンはそれほど多くありません。

  • 健康保険: 養子縁組をしていなくても、同一世帯で生計を共にしていれば、再婚相手の健康保険の被扶養者に入れることが可能です。

  • 学校の連絡: 事情を説明しておけば、学校からの連絡事項やプリント類で困ることはまずありません。


名字が違うことで生じる「リスク」への備え

養子縁組をしない場合、唯一注意が必要なのが「法的なつながり」の薄さです。以下の2点については、事前に対策をしておきましょう。

① 相続権の問題

養子縁組をしていない子供には、再婚相手の遺産を相続する権利がありません。

  • 対策: 再婚相手に「子供に財産を残す」という内容の遺言書を作成してもらうことで、法的な血縁がなくても資産を引き継がせることが可能になります。

② 万が一の「親権・監護権」

あなた(実親)に万が一のことがあった場合、養子縁組をしていない再婚相手には子供の親権がありません。

  • 対策: 未成年後見人の指定など、あらかじめ「もしも」の時に誰が子供を守るのかを話し合い、公正証書などで意思を残しておくことが大切です。


家族の形に「正解」はない

「名字が同じでないと本当の家族になれない」というのは、単なる思い込みかもしれません。

大切なのは、同じ屋根の下でどれだけ笑い合えるか、お互いを尊重できるかです。子供が「今は名字を変えたくない」と言っているなら、その意思を尊重して**「養子縁組をしない再婚」**からスタートしてみてはいかがでしょうか。

子供が成長し、自分で「名字を変えてもいいかな」「この人と本当の親子になりたいな」と思える日が来た時に、改めて手続きを検討すればいいのです。


まとめ:焦らず、子供のペースに合わせる勇気を

再婚は大人にとっても大きな決断ですが、子供にとってはそれ以上に環境が激変する出来事です。

  • 名字を無理に変えないことで、子供の自尊心を守る。

  • 養子縁組をしないことで、実親からのサポートも継続する。

  • 法的なリスクは遺言書などの事務的な工夫でカバーする。

このような「柔軟なステップファミリー」の形が、今の日本でも一般的になりつつあります。周りの目や形式に縛られず、あなたと、あなたのパートナー、そして大切なお子様が一番心地よく過ごせる距離感を見つけてください。