3歳児のコミュニケーション能力:友達との会話に現れる発達
3歳児は、言葉の力が爆発的に伸びる時期であり、友達とのコミュニケーションも大きく進化します。それまでの「自分の世界」での遊び(並行遊び)から、徐々に「友達を意識した遊び」(連合遊び、協同遊び)へと移行していくのが、この時期の会話の特徴です。
1. 3歳児の会話の土台:言語能力の飛躍的発達
3歳児は、まず言葉の理解と表現力が劇的に向上することで、友達との本格的な会話の土台が築かれます。
語彙の爆発的な増加: 語彙数が急激に増え、日常会話に必要な単語を習得します。
文法の習得: 「ママ、おもちゃ、とって」といった三語文を話し始め、さらに「てにをは」などの助詞も使いながら、より複雑な多語文を構成できるようになります。
「なぜなぜ期」の始まり: 因果関係や理由への興味が芽生え、「これ、何?」「どうして?」といった質問が頻繁に増えます。これは、世界への探求心が育ち、それを言葉で確かめようとする発達の証拠です。
2. 友達との会話の主な特徴
3歳児の会話は、社会性や共感性がまだ未熟なために、**「自己中心的な要素」と「社会的な要素」**が混在しています。
会話の特徴 | 具体的な行動 | 留意点(まだ難しいこと) |
自己主張の増加 | 「これ、わたしの!」「〇〇したい!」など、自分の欲求や意志を言葉でストレートに伝える。 | 相手の「気持ち」や「要求」を理解して、適切に応答すること。 |
一方通行の会話 | 友達の言葉を聞かず、自分の言いたいことだけを言う(集団独語)。会話がテーマの単語から逸脱しやすい。 | 相手の話を最後まで注意深く聞くこと、文脈を維持すること。 |
遊びの交流 | 遊びの中で「これ貸して」「どうぞ」といったやり取りや、「これ見て!」「すごいね!」といった感情や感想の共有が生まれる。 | ルールを柔軟に変えることや、我慢や譲歩をすること。 |
ごっこ遊びの発展 | おままごとやヒーローごっこなどで、簡単な役柄を決めて言葉を交わすようになり、連合遊び(同じ場所で遊びつつ、言葉や物のやり取りをする)が見られる。 | 共通の目標に向かって協力する協同遊び(4歳以降に本格化)は、まだ難しい段階。 |
3. コミュニケーション能力を伸ばす関わり方
3歳児が友達との会話を通して社会性を身につけていくためには、大人のサポートが不可欠です。
「聞く力」を育てる: 会話のキャッチボールができるよう、「〇〇ちゃんはこう言っているね。あなたはなんて言いたいの?」などと、相手の言葉を一度受け止める声かけを挟みましょう。
感情の言語化を助ける: 友達とトラブルになったとき、「叩いちゃだめだよ」だけでなく、「おもちゃを取られて、悲しかったんだね」と、子どもの気持ちを言葉にして代弁し、他者の感情を理解する手助けをしましょう。
具体的な表現を使う: 「あれ取って」ではなく、「棚にある、赤い車のブロックを取って」など、日頃から具体物や色、位置を示す言葉を使うことで、子どもが詳細な言葉を使って意思疎通を図る練習になります。
「なぜなぜ」に丁寧に答える: 質問を遮ったり適当にあしらったりせず、「知りたい」という好奇心を大切にして丁寧に答え、言葉の探求を応援しましょう。
3歳児の会話は時にちぐはぐに見えますが、これは自己と他者の存在を認識し、その間に言葉という橋をかけようと一生懸命に努力している過程です。結果よりも、**「伝えたい」「繋がりたい」**という意欲を褒めることが、コミュニケーション能力の成長につながります。