【未就学児の情緒安定】心の土台を作る「安心感」と「共感」のケア

未就学児は、まだ自分の複雑な感情を言葉で表現するスキルが未熟なため、「泣く、怒る、物に当たる」といった行動で感情を発散します。この時期に必要なのは、「自分は大切にされている」という揺るぎない安心感と、感情を否定されない経験です。

1. 「安心の基地」になる：揺るぎない信頼関係の構築（0〜3歳向け）

この時期の子どもにとって、親は「安心できる基地」です。この基地が安定していることが、心の安定に直結します。

ケアのポイント	具体的な接し方	効果
存在の肯定	特別なことがなくても「大好きだよ」「あなたがいてくれて嬉しい」と伝える。	自己肯定感の根っこを育み、「自分は愛される価値がある」と感じさせる。
即時の応答	泣いたり、助けを求めてきたりしたら、すぐに目を見て応える。	「困った時は必ず助けてもらえる」という信頼感と安心感を養う。
スキンシップ	抱っこ、頭を撫でる、手をつなぐなど、五感で愛情を伝える。	脳内でオキシトシン（愛情ホルモン）が分泌され、強い安心感が生まれる。
ルーティン	毎日決まった時間に食事や睡眠をとるなど、生活リズムを崩さない。	見通しが立つことで不安が減り、心が安定する。

2. 「感情の通訳者」になる：感情を受け止める共感（3〜6歳向け）

「イヤイヤ期」や「癇癪」が起こりやすいこの時期は、子どもが感情の整理を学んでいる大切なステップです。親は感情を否定せず、「通訳者」になることが重要です。

ケアのポイント	具体的な接し方	NGな接し方
感情の代弁	泣いて怒っている時に「悔しかったね」「悲しいんだね」と感情を言葉にしてあげる。	「泣かないの！」「そんなことで怒っちゃダメ！」と感情を否定する。
行動と感情の分離	「怒るのは仕方ないけど、物を投げるのはやめようね」と感情と行動を分けて伝える。	感情ごと押さえつけたり、無視したりする。
選択肢を与える	「靴下を履きたくない」など、こだわりにぶつかったら、「青と赤、どっちにする？」と小さな選択権を与える。	全てを親の思い通りにさせ、子どもの「自分で決めたい」気持ちを潰す。
頑張りを認める	成功した結果だけでなく、頑張ったプロセスを具体的に褒める。「よく挑戦したね」	「すごいね」の一言で終わらせたり、他の子と比較したりする。

3. 「セルフケア」の土台を育てる：自律と発散を促す

情緒安定には、溜まった感情を健康的に発散する方法を学ぶことも必要です。

① 遊びを通じた発散

遊びは子どもにとっての「仕事」であり、ストレス発散と自己表現の場です。

• 十分な運動: 公園で走る、体を大きく動かす遊びは、自律神経を整える効果がある。

• 創造的な遊び: 粘土、お絵描き、ごっこ遊びなどは、言葉にできない感情を表現し、心の整理につながる。

• 主体的な遊び: 親が介入しすぎず、子どもが「自分で考えて決める」遊びを尊重し、見守る時間を持つ。

② 親自身の心の安定

子どもは親の感情に非常に敏感です。親がストレスを抱えていると、その不安やイライラは子どもにも伝わり、不安定になります。

• 親自身の休息: 一人で抱え込まず、パートナーや親族、子育て支援サービスに頼って、親が休む時間を確保する。

• 客観的な視点: 「どうしてうちの子だけ…」と悩む前に、子育て相談窓口や専門家に話を聞いてもらい、客観的なアドバイスを得る。

• 完璧を目指さない: 「完璧な親」である必要はないと割り切り、少し肩の力を抜くことが、結果的に子どもの安定につながる。

【心のサインを見逃さないために】

未就学児が言葉ではなく行動で示す心のサインには、以下のようなものがあります。

• 身体の不調: 「お腹が痛い」「頭が痛い」など、病院で異常がないのに不調を訴える。

• 退行現象: 一度できるようになったことができなくなる（おねしょ、指しゃぶりなど）。

• 極端な変化: 急に無口になる、逆に常にイライラしてキレやすくなる、甘えが強くなる。

これらのサインが長引く場合は、無理せず、地域の保健センター、子育て相談窓口、児童相談所などに相談し、専門家のサポートを得ることも大切です。